タイトル:ソウルの練習問題新装版


著者名:関川夏央

出版社:集英社

価格:¥571(in tax ¥600)

1984年に情報センター出版局より発売された本書は
その後、新潮社から文庫化された。
親本から数えて15年以上も刊行され続けた本である。

舞台は1980年代の韓国。
主にソウル。
著書は韓国とソウルに関しての誠実な
旅行案内を書くつもりであったようだが
なかなかどうして、恋愛小説や一種の冒険譚とも呼べる
作りになっている。
それがために、今読み返してみても
古さを感じないし、何年も読み継がれてきたのだと思う。
ちなみに、俺が本書を手にしたのは2000年の春先。
前年末からこの年の正月にかけて、初めてソウルを
訪れた後の事だ。
この本を読んで俄然、韓国へのリピート熱は喚起された。
気が付いたら、俺のパスポートのスタンプは
シンガポールと香港を除いてすべて韓国となっていた。
理由は簡単だ。
旅をするならば、この本のようにありたいと思ったから。
未だにその域には達していないが........。

時を経てこの本は、出版社を集英社に移し
集英社文庫から新装版として再発された。
新潮社版から若干の改訂を加え、
南神坊・高野文子・大友克洋らが描いた
イラストは写真に差し替えられたが、
内容が変わったわけではない。

新潮社版にあった、フリーライターの宮村優子と
作家の赤瀬川源平の解説が無くなったが
著者による新装版のあとがき
「ソウルの練習問題から四半世紀」が掲載されている。
12P。
というか、俺はその12Pの為に買ったのだけど。
この数年、朝鮮半島の問題にほとんどコミットしてこなかった
(あるいは、意識的にしなかった?)著者の久しぶりの
韓国・朝鮮論である。
韓流ブームだったからこそ、著者の冷静なコメントを
聞きたいと何度思ったことか.........。
最後の最後に大きなミスがあるものの、
¥600の価値を見いだせる内容だった。

こうなれば、集英社は著者のコリアン4部作の
残り、すなわち「海峡を越えたホームラン」
「東京から来たナグネ」「水の中の八月」
も新装版で出すべきだ。
当然、新しい後書きもつけて。