年明けから読み始めた「エイトメン・アウト」を読了した。
この本が出たのは、フィールド・オブ・ドリームスに端を発した
「シューレス・ジョーブーム」の頃である。
フィールド...は日本でも人気映画となったが、エイトメン...は
日本未公開。
それでもかつてはビデオソフトが、現在でもDVDが売られている。
(余談になるが、VTもDVDも字幕のみ収録なのだ、VTはともかくDVDは吹替え版を
入れることは出来た筈。マスターが無いとは言わせない、だって午後ローで吹替え版を
放送してるんだから。) 

さて、原作本である。
映画では深く描かれなかった、ギャンブラーたちの思惑やホワイトソックスの選手と
ギャンブラーが疑心暗鬼になって行く過程、そして法廷の経過や選手たちのその後である。
「ワールドシリーズで八百長を行った」というインパクトが強く残っているので、選手たちは
その年限りで追放されたのかというとそうではなく、翌シーズンも選手としてプレーを続け
(選手に八百長をもちかけた、チック・ガンティルだけは1920年度の選手契約を結ばなかった)
さらに、八百長を続けていたのである。

当時の新聞は、この所謂「ブラックソックス・スキャンダル」を連日報道し、その渦中に
(後に様々なヴァリエーションを生み出す)「嘘だと言ってよジョー!」というシーンが生まれるわけだ。
結局、選任されたランディスMLBコミッショナーの判断により、司法がシロといった選手たち8人が
八百長の罪で永久追放となるわけだ。

で、映画には描かれていないが追放された選手7人(身分回復後のMLB復帰を目指していた、
バック・ウィーバーを除く)は後に、ニューヨークの興行師が作った野球チームに参加して全国を巡業して
廻るのである。
しかも、ギャラは週1000ドル。
八百長の代償で得た金が5000ドルなのを踏まえると考えさせられる数字である。
シューレス・ジョーこと、ジョー・ジャクソンは金を(文盲だった彼は、八百長を理解していなかった)貰ったが
成績を見れば明らかに、八百長はしていない。
また謀議に加わったものの金を受け取っていなかった(八百長の事実を知っていながら報告しなかったことを
咎められた)スウィード・リスバーグは、名前を変えてマイナーでプレーしたのではないか?とも言われている。
野球短編小説の名作「12人の指名打者」所収の「閃きのスパイク」はそんなリスバーグをモデルにした主人公と
若いマイナーリーガーの交流を描いた話である。

歴史にifはないが、もしもコミスキーオーナーがユニフォームのクリーニング代や食事代をケチらず
年俸も大盤振る舞いをしていたら、この事件は起きなかったのだろうか?
また、ランディスコミッショナーがこの8人と一緒に、別件の八百長が噂されていた球聖タイ・カッブも追放
していたら、MLBは今に続く繁栄を享受できたのだろうか?

本を読みながら1世紀も前に起きたMLBを脅かした事件に思いをはせるのである